微弱な相互作用に対する検出感度が優れた大型長波長中性子干渉計を開発して精密中性子干渉光学技術を確立し、超低エネルギー基礎物理の新しい分野を拓くことを目指し、また、大強度陽子加速器計画J-PARCの新パルス中性子源に適した干渉実験技術の開発と物理実験の準備を進めてきた。 より長波長の中性子(冷中性子)に適用できる大型の干渉計の開発・応用によって微弱な相互作用検出の高感度化を図る多層膜冷中性子干渉計の開発と応用は世界に類のない日本発の独創的な研究である。世界的研究拠点となる大強度陽子加速器計画J-PARC新パルス中性子源に、冷中性子干渉実験に最適な低発散ビームラインを建設し、これによる基礎物理を推進する。これまでの定常炉での成果を踏まえ、パルス源を活かした成果が期待されている。 定常炉であるJRR3MにおけるMINE2ビームラインにおいて、環境要因等のこれまでの知見を踏まえ、振動測定・防振対策について対策を施し、これによって、多層膜冷中性子干渉計で初めて、2経路のビームの全くオーバラップのない干渉光学系を実現することに成功した。一方の経路のみに挿入物を機能させる測定や、経路で囲まれる面積に対する幾何学的効果の測定の可能性が拓かれた。最終年度では、アラインメント手順改良の試行を重ね、また、各経路のごとの偏極度の値を確認することが出来た。干渉シグナルの安定化のための振動測定の必要性・方策についても検討を加えた。
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