研究概要 |
CAITEN装置:2010年末、Caビームを利用したインフライト・ビーム実験が実施された。このキャンペーン実験で生成された中性子過剰な原子核(RD)は、最下流で不要となるため、RIを再利用したβ崩壊一括測定実験を初めて実施した。大強度ビームにおいてその威力を発揮する革新的な半減期測定装置(CAITEN)、γ検出器(Ge検出器,LaBr3検出器)、中性子検出器(液体シンチレータ)を組み合わせることにより、高統計・高精度βスペクトロスコピー実験を実現可能とした。長期実験(約1ヶ月)の測定により、かつてない広範囲の中性子過剰な原子核(Ne,Na,Mg,Al,Si)のβ崩壊測定実験に成功した。データ解析の結果、非常に中性子過剰な原子核の遅発γ線に威力を発揮することを確認した。 半導体検出器:2009年末のUビームを利用した最初の元素合成に関わるβ崩壊実験のデータ解析を進めた。その結果、非常に中性子過剰な38個の原子核(Kr~Tc)の半減期測定に成功した^※。内、18個の寿命測定は世界初。これまでの理論予想との系統的な比較の結果、ZrとNb(Z=40-41)は予想よりも1/2~1/3も寿命が短いという非常に興味深い結果を得た。これは、「予想以上に速くr過程が進んだのでは?」という効果を示唆し、最初のr過程に関する実験的成果となる。 ※Phys. Rev. Lett. 106 (2011) 052502-1~5. 中性子検出器:中性子検出効率の定量的な評価を行うために、MCNP解析コードを導入したシミュレーション計算を進めた。その結果、β線検出器の周囲を覆う検出器・設計が鍵を握ることがわかった、また、小型で高性能の飛行時間検出器型中性子検出器のアイディアを得た。
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