超新星爆発など中性子が多量に放出される環境において、急速な中性子捕獲過程(R-過程)が起こると考えられている。この爆発的元素合成において、軽い原子核からウラン領域までの多量の中性子過剰核が一挙に生成され、β崩壊により安定核へと降り積もった。一方、この過程における詳細なメカニズムは謎に包まれている。この問題を解く鍵として、広範囲に存在したと考えられる非常に中性子過剰な原子核の半減期、中性子放出確率、励起レベル、質量を精度良く測定する必要がある。 理化学研究所・RIBF加速器施設が完成し、大強度ウランビームを用いた重い中性子過剰核の生成が可能となった。生成した中性子過剰核は、粒子識別を行い効率的に検出器に埋め込む手法を導入することにより、高精度β崩壊測定実験を行う。そこで、原子核の崩壊に伴い放出されるβ線、γ線、中性子を効率的に測定する必要があり、検出効率を重視した測定装置の開発・製作を行う。最終的には、各測定装置群を組み合わせることにより、高精度βスペクトロスコピー実験を行い、非常に中性子過剰な原子核の核構造および天体核物理に関する研究を推し進める。
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