J-PARC原子核素粒子実験施設において物理採択された実験E16("Electron pair spectrometer at the J-PARC 50GeV PS to explore the chiral symmetry in QCD")のためのプロトタイプ電子検出器開発を行っている。本検出器はGEMトラッカー部、HBD(ハドロンブラインド:GEMをもちいたガスチェレンコフ検出器)部、鉛ガラスカロリメータ部の三段構成である。 本年度は、同電子検出器を製作、性能テストをおこなった。 詳細設計の結果、当初予定では一体構造であった鉛ガラスカロリメータ部はトラッカー部、HBD部と分離することにした。重量比からいってトラッカー部のアラインを困難にする可能性を考慮しての変更である。 GEMトラッカー部は昨年製作した。このトラッカー部は、有効検出面積100mm角、200mm角、300mm角の3面のGEMチェンバーを持つ。昨年製作した低物質量読み出しstrip基板と大型GEMをくみこみ、実験室での動作テストののち、KEKで2GeV/cの電子ビームを使用してテストを行った。 予備的解析結果では、数Hzのビームについて、位置分解能120ミクロン以下であった。この分解能は要求性能をみたしている。今後ハイレート耐性のテストをする必要がある。 HBD部に関しては、GEMへのCsI光電面蒸着を浜松ホトニクスに依頼して行った。同テスト用小型チェンバーを本研究費で製作、CF4ガスを用いた動作確認をおこなった。さらに、理研内工場で製作したHBDガス容器本体と上述CsI光電面、および本研究費で試作した読み出し基板を組み合わせて、上述HBD部とし、KEKで2GeV/cの電子ビームを使用してテストを行った。容器を大型にしたにもかかわらず、CF4ガスを用いたGEMの動作は成功し、ビームの検出には成功した。しかし、チェレンコフ光については所期の検出効率を得られず、原因を調査中である。 同実験についてプロトタイプ検出器開発状況をふくめ6回の学会発表を行った。
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