研究課題/領域番号 |
19340076
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 雅幸 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60183993)
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研究分担者 |
橋本 秀樹 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (50222211)
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キーワード | エネルギー移動 / 光合成 / 超高速分光 / カロテノイド / 振動緩和 / 振動制御 / 光捕集作用 / マルチパルス励起 |
研究概要 |
光合成の初期過程で起こる超高速エネルギー移動の機構を、波長可変およびマルチパルス励起光を用いて解明することが本研究の目的である。試料には自然由来のものだけでなく、再会合により色素を変更した人工の色素蛋白複合体を用いた。 カロテノイド(Car)のS_2励起状態とバクテリオクロロフィル(Bchl)のQ_x励起状態を出発点とするエネルギー伝達過程の評価を、色素分子が異なる複合体について系統的に行った。この結果、光捕集作用は準位間のエネルギー差だけでは説明できず、振動状態やBChlの中心金属の違いに影響されることが明らかにされた。 マルチパルス励起では、BChlのQ_y状態が励起されていると、Car中にS^*と呼ばれる励起状態が生成されエネルギー移動効率が下がることが示された。これは本研究で新たに発見された光保護機構である。また、フェムト秒誘導ラマン分光装置のラマン励起光を波長可変とし、共鳴効果により励起状態を選択的に観測することを可能とした。色素蛋白複合体に応用した結果、CarのS^*状態はS_1状態とは異なり3重項状態に似た構造をもつことが示された。超短光パルスおよび波形整形光パルスによる振動制御では、CarのS_1励起状態にC=C伸縮振動をコヒーレントに励起することに初めて成功した。現在、色素蛋白複合体への応用に最適な励起波長とパルス波形の組み合わせを探索中である。 本研究では、励起状態の振動をフェムト秒時間領域で観測および制御する技術の開発に成功し、光合成初期過程におけるエネルギー移動の詳細を明らかにした。特に、従来はあまり注目されていなかったCarのS^*状態についての新しい知見を得た。
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