本研究では、電子移動を伴う電気化学反応を第一原理計算を用いてシミュレーションを行うことを目的としている。本研究課題開始前に行っていた予備計算も含めて、本年度はPt-水界面の界面構造の電位依存性を調べた。また、昨年度の実績と合わせて、解説記事を執筆し招待講演も多数行った。 Pt電極上の反応を知る上で界面構造の電位依存性は重要である。本年度は負電圧を印加したPt/水界面の構造の電圧依存性を調べた。電圧=0の界面に置いては、酸素のローンペア軌道がPt表面に向いた0-down構造が最安定構造である。この最安定構造以外はPt表面に強く束縛されることなく、ランダムな配置をしている。 Ptに弱く電圧を印加すると、0-down構造は不安定になる。これはPt表面が負に帯電するからであり、弱く負に帯電している酸素原子と静電的に反発し、エネルギーが上昇する。負電圧を印加した元では水素原子がPt表面を向いたH-down構造が最安定構造になる。電圧が弱い場合はPt表面と水の相互作用が弱いために水素原子が上を向いたH-up構造も少し存在する。 負電圧を大きくすると、電場と水の相互作用が支配的になり、H-up構造は不安定になり、H-down構造の存在確率が大きくなる。それと同時に、H-down同士を水素結合でつなぐように配置した水分子も同様に存在し、Pt表面の水は表面水平方向に2次元的な水素結合ネットワークを形成する。このネットワークの形成が水素吸着反応を起こりやすくしており、電気化学反応の活性化エネルギーを下げていると考えられる。
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