H19年度までに本装置でスピン検出が可能であることを確認したので、H20年度にはその本格的な性能評価を行い、さらにその性能と安定性の向上をめざし研究を行った。昨年度までにスピン検出能力を示すシャーマン関数が0.29程度であることを見積もっていたが、本年度によりよい夕一ゲットの作成方法を探索し、性能を向上させることにより0.40まで向上することが出来た。これにより世界最高の高効率 (検出効率 FOM=1.9×10-2) を達成した。その結果、高分解能でのスピン分解光電子分光測定が可能になり、エネルギー分解能 30meV という、スピン分解光電子分光装置としては世界でも類を見ない高分解能が実現された。この結果は各種学会および学術雑誌に発表した。続いてこの装置を用いて Ni(110) 表面の磁性の観測や、スピン軌道相互作用により生じる表面におけるスピン分極を Bi/Ag√3x√3 表面において観測した。また BiSb 合金のスピン分極の観測なども行い、これらの成果は学会で発表し、現在学術雑誌に論文を投稿中である。一方、当初予定では H20 年度に電子ディフレクターを作成し面直磁化観測可能な装置への改造、H21年度にx、y、zすべての方向のスピンを検出することの出来る装置に改造する予定であったが、段階的にではなく一度に改造を行った方が効率的であるので設計を変更した。現在その設計がほぼ終了し、H20年度の予算で周辺装置を整備したところである。実際の作成組み立ては21年度に行う予定である。
|