1)フラーレンピーポッドの作製と光学応答の研究 C_60、C_70を内包したカーボンナノチューブ(フラーレンピーポッド)を作製し、その光物性と非線形性の増大化を調べた。ラマンスペクトルの測定から、C_60ピーポッドの場合、C_60分子が重合して一次元ポリマーを形成していることがわかった。フェムト秒ポンプ・プローブ分光によってフラーレンピーポッドの3次非線形感受率を測定したところ、内包されたフラーレンに起因する非線形応答の成分が観測された。フラーレンとナノチューブを複合化することによって2eV近傍では非線形感受率が増大することを見出した。 2)単層カーボンナノチューブの非線形光学応答の共鳴増大効果 カイラリティの異なるナノチューブにおける特定の励起子準位にレーザー光を共鳴させることによって、擬一次元励起子の特徴を反映して非線形感受率が共鳴増大することがわかった。さらに、非線形感受率の励起スペクトルを詳細に測定することによって、フォノン放出を伴った励起過程を含む3次非線形光学過程により、特定チューブの非線形感受率が増大することを明らかにした。これは、一次元励起子系の非線形光学過程においてフォノンを伴った光学過程が現れることを示した成果である。 3)単層カーボンナノチューブの励起子構造の研究 ミセル化カーボンナノチューブの電場変調分光を行い、カイラリティに依存した励起子構造の詳細を明らかにした。電場変調スペクトルの解析から、2光子過程によって光学遷移が可能となる暗励起子と1光子許容遷移である明励起子は"近い縮退状態"にあり、暗励起子準位が明励起子のそれよりも高エネルギー側にあることがわかった。これらの研究により、これまで同定されていなかった暗励起子の準位構造が明らかになった。
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