平成19年度においては、微細ツイン制御の基本となる振る舞いを観察し特性評価に注力した。微細周期でパターニングを行った水晶基板において、集団としての周期構造を実時間観察し、ツイン形成のプロセスを構成するa)核生成、b)Y軸方向伸張、c)面内成長、d)安定化のそれぞれの過程について調査を行った。均一な周期構造を得るために核生成プロセスは極めて重要であるが、この現象は臨界現象であるため外力(ここでは応力)および温度で非常に敏感に変化しそれぞれに高い精度を要求する。測定の再現性を得るために本年度、350-400℃付近のプロセス温度において±2℃の温度制御を実現し、高速制御によるフィードバックをかけることで、オーバーシュートなどの時間的ゆらぎを除去して、核生成に必要な抗応力(強誘電体の抗電界にあたる)を数%精度で測定した。これは過去のどの報告よりも精度が高い。微細周期実現のために、核生成密度の大幅な向上が必要であることがわかり、応力印加時の温度条件が大幅に高温側に移動することとなった。 また短周期化が進みツインのサイズが小さくなるに連れて、要求される応力の値が上昇することもわかった。ツインサイズと抗応力の依存性は過去において全く報告されておらず、固体物理の観点から新しい知見が得られている。この結果はツイン壁へのエネルギー蓄積があることを示唆しており、「水晶のツインは大きなイオンシフトを伴わないため壁に蓄積されるエネルギーを無視できる」としてきた1960-80年代の報告と明らかに矛盾する。今後も継続的な調査が必要である。
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