研究概要 |
本研究では,ウラン化合物に現れる弱い磁性と隠れた秩序の起源,並びにこれらの性質と異方的超伝導との関係性の解明を目指している.今年度の主な成果は以下の通りである.1.URu_2Si_2の隠れた秩序を解明するため,高圧下で現れる反強磁性状態を詳しく調べる研究を進めた.電気抵抗や熱膨張は既によく調べられているが,磁化のデータが少ない点に着目し,約3GPaの高圧領域までSQUID磁束計を用いて磁化を高精度で測定可能な高圧セルを作製した.実験の結果,磁場や僅かな一軸応力によって反強磁性相は敏感に抑制されることがわかった。現在,多数の圧力点について慎重に測定と解析を進めており,これまで議論されていなかった高温領域の電子状態と基底状態との相間について新たな情報が得られるものと期待される.2.URu_2Si_2について多極子秩序の可能性を調べるため,Rhドープ系の弾性応答の再検証を進めた.精度を向上させた実験により,隠れた秩序における弾性定数C_<44>とC_<66>の応答に過去の報告よりも大きい差異があることがわかった.またRhドープ系でごC_<11>に現れる弾性異常が母物質と異なることも明らかにした.3.5f電子状態の遍歴・局在双対性に関する基礎情報を得る目的で,UPd_2Si_2における非整合-整合反強磁性秩序の圧力効果を調べた.その結果,3.4GPa近傍にLifshitz点と考えられる2重臨界点が存在することを初めて観測した.低温で見られる重い電子的振る舞いと比較的高温で秩序に至る局在的磁性との共存がどのように理解できるのかは興味深い点であり,圧力効果の詳しい解析を現在進めている.4.その他,関連系としてUPt_2Si_2の低温異常磁性,U_3Pd_<20>Ge_6の磁性と多極子との相間及びラットリングの検証,またUBe_<13>の超伝導状態における熱平衡磁化測定などの研究を進め,それぞれ興味深い結果が得られている.
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