カサグレイン鏡を備えた顕微赤外分光装置の立ち上げを行い、波数域350〜8000cm^<-1>、温度域4.2〜440Kで微小試料の赤外スペクトルを得ることが可能になった。また、水分に強いZnSを光学クライオスタットの窓材に採用することで、相対湿度調整も可能である。顕微分光以外に、赤外分光装置本体に直接光学クライオスタットを設置できるように設計したため、遠赤外域(50〜350cm^<-1>)への拡張もできる。 Naを対カチオンにもち、一様な塩基配列を有する乾燥DNAについて、相対湿度を制御した環境下において赤外分光とマイクロ波誘電率の温度変化を測定した。この2つの方法を組み合わせることで、水和殻に存在する水分子数及び配置場所の特定、そして水分子が有する電気双極子のダイナミックスを初めて明らかにした。次に、室温に限られるが、Mnを導入したDNAについて、相対湿度を変えて赤外スペクトルを測定した。その結果、リン酸基に起因した分子振動が激しくシフトすることを見出した。このことは、水和殻にも影響があることを示唆する。また、塩基の分子振動バンドには顕著な変化はみられず、Mnイオンは塩基と共有結合を形成しないことが判明した。 層間にNa或いはCuを導入したMn酸化物バーネス鉱を作製し、赤外スペクトルの測定を試みた。本実験は顕微赤外分光装置が導入される以前で、東北大学学際センターの共通機器を利用した。湿度調整が行えなかったため、面間を出入りする水に関する知見は得られていない。本年度はバーネス鉱試料の基礎物性(X線散乱実験、磁化測定など)を明らかにしている。
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