研究概要 |
19年度に導入した赤外分光計を、遠赤外域(50〜600cm^<-1>)まで実験できるように拡張工事を行い、計画通りのスペックを得た。大気に暴露させない赤外セルを試作し、ヨウ素ドープしたDNAの赤外分光測定に利用した。金属イオンを導入したDNAにおける水和状態とバーナサイト中の2次元空問に閉ざされた水について、研究をまとめ上げ、その成果を論文として投稿した。以下に、成果をまとめる。 1) 金属イオン(Li, Na, Mg, Ca, Mn, Fe, Zn)を導入した乾燥DNAについて、赤外スペクトルの湿度依存性、及び金属イオン依存性を調べた。その結果、+2, 3価の金属イオンは塩基配列中に導入され、水和によりリン酸基間のクーロン反発力が抑制されるが、脱水により構造の不安定化が起きることが分かった。 2) バーナサイトは2次元的に閉ざされた水をもつが、その特性は明らかでない。真空排気すると、その構造を維持するために必要な水分子が、Naイオンの周りに平面状ヘキサマーを形成することが分かった。このとき、特徴的な吸収ピークが3000cm^<-1>付近に3個観測することに成功した。このような新たな現象は、水クラスター形成に関する極めて重要な実験事実を得たといえる。X線構造解析の結果も考慮すると、水分子が平面に強く束縛されるため、ヘキサマーに歪みが生じ、水分子間の距離として3種類存在すると考えられる。
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