研究概要 |
P波超流動体である超流動3Heには、内部自由度の存在によりA相,B相のほかに磁場中でのみ存在するA1相がある。我々の8Tまでの強磁場中における磁気噴水効果の測定から、このA1相に固有の温度・磁場依存性を持つスピン緩和が観測され、磁場に反平行な磁気能率を持つクーパー対が微量存在することが判った。その過程で見出された緩和時間の温度依存性の急激な上昇(キンク)の起源を調べるためにマコール製の新しい試料セルを製作・測定を試みた。その結果、このキンクは検出室と外側試料室の間の微小な温度差によりA2相界面が生じるためであることが判明した。この温度差を除き、A1相全域に亘りスムーズな温度・圧力依存性が得られ、理論との比較が容易になった。次に磁場領域を15Tまで拡大するために、同じセルを用いてスピンポンピング効果によるスピン緩和の測定を試みた所、2つの方法により得られる結果に大きな差異はなく同じ物理量が測定されていることが判り、より広い磁場領域までスピン緩和の測定が可能となった。次にスピンポンピング法を用いて、熱平衡状態より高い核編極度を得るために新しいスーパーリークとstiffnessの小さいメンブレンを有する試料セルの開発を行った。現在、核編極度の上昇は確認されているが、さらなる改良の必要があることが判った。
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