研究課題
SrTiO_3およびTi_<1-x>Co_xO_<2-δ>の表面において、バンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ紫外線照射によって誘起されるキャリアーの性質を光電子分光によって解明した。SrTiO_3では紫外線によって励起されたキャリアーがバンドギャップ中に束縛状態として観測されることを示し、Ti3dバンドの軌道縮退を考慮したモデルによって実験結果を解釈できることを提案した。この成果は、誘電体において光励起されたキャリアーを利用する光スイッチ開発の基礎となる可能性を示している。一方、Ti_<1-x>Co_xO_<2-δ>では表面に形成された空乏層に光誘起キャリアーが流れ込んで表面層での強磁性状態を形成することを実験的に証明し、光励起キャリアーによるスピントロニクスの実現の可能性を示した。これらの永続的な光誘起相転移に関しては、光電子分光の特色を活かした独創的な研究成果が得られたが、過渡的な光誘起相転移については応用が期待できる相転移を発見することはできなかった。これらの遷移金属酸化物に関する成果に加えて、NiやFeを含むカルコゲナイドやプニクタイトの表面において、熱的に励起された電子ホール対(励起子)のボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)の観測などに成功し、その結果の一部はPhysical Review Lettersに発表されて注目を集めている。分極率の大きな陰イオンを持つ遷移金属化合物では、種々の相転移を励起子のBECあるいはBCS転移と解釈することが可能であり、この解釈に基づいて新しいタイプの強相関電子系の光相制御を提案して、強相関電子系の分野においてインパクトを与えつつある。
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