超伝導渦糸を極低温・高磁場走査トンネル顕微鏡(LT/HT-STM)を用いて、磁場中の第2種超伝導体の渦糸運動を実空間・実時間測定し、超伝導渦糸ダイナミクス等について以下の研究を行った。 (1)硼炭化物超伝導体YNi_2B_2Cの渦糸集団運動を、0.45Kと4.2Kの温度、1-4Tの磁場下で測定した。約200個の渦糸が実空間で約10秒で画像化され、それを連続測定することにより、渦糸の動画の作成に成功した。渦糸格子の転位が渦糸集団運動に重要な役割をしていること、渦糸が転位すべり面を境にして、長方形集団で運動していることが明らかになり、渦糸集団が感ずるポテンシャルについての知見が得られた。4Tという高磁場において超伝導渦糸運動が動画として測定できたのは、初めてのことである。(2)銅酸化物高温超伝導体の渦糸芯は、数nmと非常に小さいので、STMにより高温超伝導体渦糸を測定するには、STMの安定性が要求される。STMに改良を加え、0.047nm空間分解能、長時間安定なSTM/STS測定が可能になった。Bi_2Sr_2CaCu_20_xの渦糸芯電子状態を、14.5T、4.2Kにおいて、0.047nmの空間分解能で測定に成功。これは、世界最高精度の渦糸芯測定である。(3)3He-4He希釈冷器STM用クライオスタットを振動に対して改造した、現在、装置が組みあがったところで、設計どおりに動作すると、0.17K、9Tにおける実験が可能になる。(4)超伝導薄膜の渦糸運動測定の予備実験として、Nb超伝導薄膜を作成し、その上部臨界磁場を測定した。1-10nmの超伝導薄膜の作成に成功した。
|