研究概要 |
1.YbRh_2Si_2,β-YbAlB_4などで観測されている非フェルミ液体的な振る舞いは従来の反強磁性量子臨界点でのそれと異なり新しいユニバーサリティクラスをなすものとしてこの10年あまり注目を集めてきた.これに対する統一的な視点を与える理論を展開した.すなわち、f電子と伝導電子の間のクーロン斥力を取り込んだ周期アンダーソン模型によりf電子の価数転移の臨界終点が絶対零度で実現する場合が可能であり、その近傍で発達する価数ゆらぎに対するモード結合理論を適用すると、比熱、帯磁率、電気抵抗、NMRの縦緩和率などの温度依存性が(従来の磁気量子臨界点とは異なる)新しいユニバーサリティクラスをなすことを示した.その結果は上記の実験を統一的に説明する. 2.CeCu_2(Si,Ge)_2に加圧すると臨界価数ゆらぎにより転移温度が2倍以上増大した超伝導ギャップにラインノードをもつ異方的超伝導が発現する。と同時に、臨界価数ゆらぎによって不純物ポテンシャルが長距離的になり、残留電気抵抗も顕著な増大を示す。これは、「異方的超伝導は不純物散乱に弱い」ので、パラドクスであった。長距離ポテンシャルを持つ不純物に対する様々なタイプの超伝導転移温度についてファイマン図形の手法を用いて調べた。その結果、異方的超伝導状態においても,長距離不純物ポテンシャルには多くの異方的散乱が含まれるため、クーパー対の感受率が自己エネルギーによる抑制される効果がバーテックス補正により部分的に回復することにより、転移温度の減少が緩和されることが分かった。 3.奇周波数超伝導状態における負マイスナー効果の問題を解決した.すなわち,ペア相互作用の強い遅延効果を記述するためには、経路積分を用いた記述が不可欠であり,この問題が生じないことを示した. 4.強い局所的電子格子相互作用をもつ系では「局所格子振動の振動数がソフト化すると、イオンの奇周波数超伝導状態が通常の偶周波数数超伝導状態より安定化する場合がある」ことを示した.
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