本研究は、低次元電子系、ヘリウムや水素の表面-量子界面-で発現する新しい量子現象を、極低温動作可能な走査プローブ顕微鏡(SPM)を新しいミクロなプローブとして用いて研究しようというものである。10mK程度の極低温で動作する走査プローブ顕微鏡を開発し、低温物理学にブレークスルーをもたらしうる新しい実験研究を展開していく。平成20年度は、以下の研究成果を得た。 (1)極低温動作技術の確立前年度に引き続きCMOS-OPアンプを用いた低温動作電流プリアンプの開発を行い、SPM動作周波数において10^7V/Aのゲインを有し、SN比の高いアンプの製作に成功した。また、測定装置の改良を進め、極低温度でのより安定な動作を定常的に実現し、下記摩擦力顕微鏡の開発に成功した。 (2)極低温摩擦力顕微鏡の開発と超伝導体表面の摩擦研究音叉型水晶振動子の長手方向に探針を接着して表面と平行に振動させることで、摩擦力(水平力)顕微鏡を開発した。これを用いて超伝導物質である2H-NbSe_2表面での探針と表面間の散逸を測定することに成功した。20K以下の低温では散逸の探針表面距離依存性が高温のそれと異なることを見いだした。 (3)グラファイト表面上液体ヘリウム薄膜の極低温観察グラファイト表面に厚み数十nmの超流動液体ヘリウムを乗せ、SPMによるヘリウム薄膜の観察を試みた。周波数と散逸の変化からヘリウム薄膜の超流動転移を観測することに成功した。
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