本研究は、極低温動作可能な走査プローブ顕微鏡(SPM)を開発し、低次元電子系やヘリウム等のクリーンな「量子界面」で発現する新奇量子現象の解明を行うものである。以下の研究成果を得た。(1)周波数変調型極低温原子間力顕微鏡(FM-LT-AFM)技術を確立し、50mKまでの極低温度域での動作、原子ステップ分解能の実現に成功した。(2)探針が表面に平行に振動する「極低温摩擦力顕微鏡」を開発し、典型的な層状超伝導物質NbSe_2の平坦表面におけるナノスケール摩擦を研究した。探針と表面が10nm程度離れている状況(非接触領域)でも、探針に大きな摩擦力が働くことを発見した。この非接触摩擦力の起源は従来の摩擦力理論では説明できない新奇なエネルギー散逸機構であり、摩擦現象の理解に新たな知見を与えると期待される。
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