研究概要 |
本研究代表者らの近年の研究により初めて、線形輸送現象のミクロダイナミクスからの再現に成功し、ミクロダイナミクスに基づいた非平衡現象の究明に道を開いた。この可能性を発展させることにより、これまで経験的な現象論に頼っていた工学・科学の諸問題に対し、より確たる与え、あるいはこれまでの限界を超える新技術による新展開が期待される。と同時に、いわゆる「マルチスケール・マルチフィジックスシミュレーション」に確たる基礎を与えるものと期待される。本研究の目標は、こうした応用研究の基礎となる非平衡現象の計算機シミュレーションをさらに研究し「計算機エミュレーション」にまで高めること、および非平衡緩和過程の計算物理学に基づいた非平衡統計力学の確立である。本研究第2年度となる本年度の成果は以下のとおりである: (1)熱を伝えているなどの非平衡輸送状態にある物質が、どのようにエネルギーなどを伝達しているのかを分子運動に基づいて特徴づけることに成功した。この結果を報告した論文S.Yukawa,T.Shimada,F.Ogushi and N.Ito,J.Phys.Soc.Jpn.78巻(2009)023002は、日本物理学会注目論文賞を受賞した。 (2)臨界応力よりも小さい外力をうけている固体が経年劣化により破壊するまでの寿命が従うスケーリング則を、ファイバー束模型を使った計算機シミュレーションにより発見した。 (3)動的臨界現象の普遍性を、2次元3状態ポツツ模型、3次元イジング模型に対し、非平衡緩和法をつかって数値的に確認した。 また本研究の成果他、研究代表者のこれまでの非平衡統計物理学への寄与およびその展開研究に対し、アブドラ王立科学技術大学(サウジアラビア)より、GRP Investigators賞を受賞した。
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