本研究では、微小な球形の共振器を対象としこの系で現れる「速い光」、「遅い光」の基礎物理を解明する。平成19年度までの研究では単一の微小球の作り出す分散構造を解明し、これに付随した遅い光と速い光の観測に成功している。また、平成20年度までの研究で、2つの超高Q値微小球を組み合わせた構造分散系として、CRIT(Coupled Resonator Induced Transparency:=結合共振器誘導透明化現象)を作り出すことに成功している。 平成21年度は、結合共振器誘導透明化現象にともなった極めて急峻な分散構造を利用して遅い光を実証する実験を進めた。超狭帯域単一縦モードファイバーレーザーからの連続光をLN変調器で時間的に切り出すことでガウス型の時間パルスを発生させ、微小球系を光パルスが伝播するのに要する時間遅延を測定した。そして、結合共振器にともなった遅い光の観測に成功した。単一の微小球による遅い光と比較した場合、結合共振器では透明化現象によってパルスの強度がほとんど減衰することなく系を透過してくることが特徴である。本研究課題は、本年度が最終年度となるが、研究成果を2次元的な画像伝播に発展させていくことを計画している。21年度は、このための予備実験も進めた。
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