研究概要 |
コヒーレント状態は光子が単一モードにボーズ凝縮した状態で、損失があっても干渉性が失われないため、光通信の理想的搬送波状態である。一方、スクィーズド状態は光子対のボーズ凝縮状態で、線形分波器で干渉させることで巨視的量子もつ状態を生成できるため、量子情報技術で本質的な役割を演ずる。これらの光子凝縮状態の量子重ね合わせ状態を自在に生成・制御できるようになれば、光の潜在能力を極限まで引き出す究極の量子情報通信を実現できる。本研究の目的は、光子凝縮状態の量子重ね合わせ状態を生成・制御する技術の開発である。そのためには、従来技術には無い低損失かつ高次の非線形相互作用を実現する必要がある。本研究では、スクイーズド状態から光子を抜き取る操作によってこれを実現した。具体的には、スクイーズド状態からわずかに分岐したトリガービームを2つの光子検出器で測定し、光子が検出された時のみ入力のスクイーズド状態を適切な時間フィルタによって選択的に観測することで実現する。用いたスクイーズド状態は、100ns程度のコヒーレンス時間を持つ連続波である。 2つの光子の検出時間をt1,t2とする。時間間隔t2-t1を0からコヒーレンス時間の100ns程度まで徐々に増やすことによって、量子重ね合わせ状態の振幅を増強できることを見出した。この振幅増強された重ね合わせ状態は、t1とt2にピークを持って広がったダブルピークの時間対称パケットに生成される。一方、このパケットと直交する反対称パケットには振幅の小さなスクイーズド状態が存在する。重ね合わせ状態の振幅増強は、対称パケットと反対称パケットからの識別不可能な2光子抜き取り過程が量子的に干渉することで生じていることが理論解析によって明らかになった。これは時間領域における光子凝縮状態の新たな量子干渉現象である。成果は主要な国際会議の招待講演や4編の査読論文で発表した。
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