研究概要 |
本研究の目的は電場下における高分子ブロック共重合体の秩序・無秩序相転移ダイナミクス現象の解明であり、実験と理論の2つのアプローチにより,秩序・無秩序相転移温度(T_<odt>)近傍での低電場強度によるラメラ状ドメイン配向のメカニズムを解明し,高分子ブロック共重合体の低電場による構造制御に必要な物理的条件を明らかにすることである。 まず、本研究で用いるサンプル(ポリイソプレン(PI)とポリイソブチルメタクリレート(PiBuMA)のジブロック共重合体P(I-b-iBuMA))に対して、小角X線散乱(SAXS)実験行い、秩序・無秩序相転移温度を測定しその温度が92.5℃であることを特定した。高温の無秩序相から、相転移温度より数℃低い温度に冷却し、電場下と非電場下で相構造をAFMを用いて可視化を行った。その結果、相転移温度近傍で電場を印加すると従来、メソ構造を電場方向に配向させるのに必要とされていた電場強度(10〜20kV/mm)よりかなり小さい電場強度において配向構造を実現できることが、サンプル断面のAFM観察により確認できた。この従来よりはるかに小さな電場強度で配向が実現した起源を解明するため、電場下でのメソ構造の経時変化、つまり、ラメラ構造を持ったドメインの配向度合いの経時変化をSAXSにより測定した。ラメラ面の配列過程として考えられる予想((1)配向したラメラの核生成,(2)ランダム方向を向いたラメラグレインが電場方向に再配列する,(3)ランダム方向を向いたラメラドメインが電場方向に回転する)に基づくSAXSイメージと実際に実験で得られたデータとの比較から、相転移近傍のラメらの配向は、主に(3)のランダムな方向を向いたラメラドメインが電場方向に回転し配向することによるものであることが分かってきた。来年度は、この結果を確かめるために更に実験を行い、併せて数値シミュレーションを行い、どの予想が主要な配向過程であるかを明らかにする。
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