研究概要 |
コアの必要な分【破砕帯部分,約100m】を東京大学に搬送し,コア処理を開始し,断層岩分布および断層岩分布に基づいて識別された各断層帯の幾何学的形態を把握した。その後,各断層帯について,稠密な微小構造観察を行い,破壊/変質過程の切断,重複関係を検査し,断層帯間の新旧関係を把握する。この検討は次の方法によつて行つた。(1)各破砕帯を横切るコア試料を半割した上で,半割面の研磨面を作成して観察。(2)約200試料の岩石切片を切り出し薄片を製作し,光学顕微鏡で破壊/変質薇小組織を観察し,それらの組み合わせを調べ,構造の新旧関係を判断。 この方法は,Tanakaetal。,【2001,JGR]によってその有効性が確認されており,今回の検討でもコアに含まれている断層帯の中でも最も新しい断層帯がどれかを判断することができた。 最も新しい断層面は1136m深度に位置していた。孔壁の物理検層の結果と合わせて検討した結果,この断層面が集集地震のすべり面であると推定された。同時に,滑り面を含む断層帯の幾何学的構造(faultcore,damagezoneそれぞれの幅,構造の非対称性)が著しく非対称であるこきとも見いだされた。 さらに,特定され集集地震の滑り帯内部の破壊粒子の産状,粒径分布を最小粒径に至るまで,光学顕微鏡(OM),走査型電子顕微鏡(SEM),および透過型電子顕微鏡(TEM)で観察,計側した結果,滑り面の破壊粒子の最小粒径は1nm のオーダーであった。その粒径分布は破壊に特徴的にべキ乗則型を示していた。現在,得られた観察/計測結果に基づいて,全粒子の表面積を積分して表面エネルギーを,最近開発された我々の方法[Maetal,2006Nature]を用い,集集地震において大きなすべりを示す車籠埔断層北部で消費された破壊エネルギーを計算している。
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