研究概要 |
「干渉合成開口レーダー(Interferometric Synthetic Aperture Radar/InSAR)」を陸域のプレート境界の周辺,特に大陸・島弧の双方における断層帯に適用し,地殻変動を観測した. 発達したトランスフォーム断層であるアフガニスタンからパキスタンにかけて伸びるチャマン断層では,2005年のM5の地震を契機として長さ50km以上にわたる範囲で1年以上の時定数をもった断層滑りが起きていたことが判明し,一定速度のいわゆるプレート運動は起きていないことが示唆された(Furuya&Satyabala 2008).M5の地震でも顕著な地震後地殻変動が起きることを,北米西部のサンアンドレアス断層帯以外で実証した初めての事例である.島弧内の地殻変動の事例として,1996年の鬼首群発地震に伴う地殻変動をJERS1衛星によるInSARデータから再確認し,新しい断層モデルを構築した(高田・古屋,2008;Takada&Furuya,改訂中).本震や余震といった震源の分布から推定される断層だけでは説明できない地殻変動が観測された.余震分布との比較から,複数の非地震性の断層面の存在が示唆され,解析地域の局所的な地形と過去のカルデラ壁の位置とも比較した結果,推定された非地震性の断層面の一部は,地質時代を通じて繰り返し運動し,当該地域の地の形成にも寄与してきたことが明らかになった.別の一部の非地震性の断層面は,規模の大きな地震が無い群発地震域に存在していたことから,群発地震の発生メカニズムに非地震性断層の運動が関与している可能性も示唆された.2007年7月には新潟県中越沖地震(M6.8)が発生したが,典型的な陸域プレート境界での地殻変動検出の機会と捉え,GPSとInSARデータを併用して地殻変動を観測し,断層モデルを構築した(Aoki et al.,2008).単一の断層面では説明できない複雑な断層運動が起きたことが推定された.
|