研究概要 |
「干渉合成開口レーダー(Interferometric Synthetic Aperture Radar/InSAR)」を陸域のプレート境界の周辺,特に大陸・島弧の双方における断層帯に適用し,地殻変動を観測することで、断層帯のレオロジー(変形特性)の解明を目指している. 2007年7月には新潟県中越沖地震(M6.8)が発生したが,典型的な陸域プレート境界での地殻変動検出の機会と捉え,GPSとInSARデータを併用して地殻変動を観測したが(Aoki, et.al., 2008),新たなInSARデータと水準測量データも加えて,より現実的な断層モデルを推定した(Furuya, et.al., 2008). 北西落ち, 南東落ちの複数の断層面に加えて, 余震が殆ど起きていない西山丘陵付近でも低角東落ちの非地震性の断層運動が推定され, 周辺の地形, 過去の水準測量データとの比較から, 褶曲地形が間欠的に非地震性の断層運動で形成されることを実証した. 2008年5月には, チベット高原と中国四川盆地の境界の龍門山断層帯で波川地震(M7.9)が発生した. この地震では断層直上の変位量が非常に大きく, 標準的なInSAR技術で要求される干渉性が保たれないため, 通常のInSAR技術では断層そのものの場所や変位量が不明だったが, 画像マッチング法(ピクセルオフセット法)の適用により, 北川(Beichuan)断層で破壊が進行し, その北東延長は従来から推定されていたよりも50km程度長いことが分かった(Kobayashi, et.al., 2009). また破壊開始点に近い南西部では, 北川断層以外にGuanxian-Anxian断層でも70km程度の長さに沿って顕著な逆断層型の運動が起きていたことも分かった. 2008年6月には岩手宮城内陸地震(M7.2)が発生し, この地震についても震源近傍での変位量の抽出には通常のInSARデータが使えず, ピクセルオフセット法の適用によって初めて断層運動の実態に迫ることが出来た(Takada, et.al., 2009). 地震波解析から示唆される西落ちの断層面に加え, それでは説明不可能な顕著な変位の急勾配が栗駒山東に見出されたことから, 東落ちの断層面の存在を提唱した.
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