研究課題
大気上層にある巻雲等の氷粒子から成る雲の生成と消滅のメカニズムを目的として、レーダーやライダーによる氷雲の微物理特性解析を実施し、また観測結果と気候モデルにおける上層雲再現性に関しての比較手法を探った。雲の鉛直構造を観測するのに適した雲レーダーと搭載したCloudSat衛星と、ライダーを搭載した衛星搭載センサを中心に、従来型のイメージャーと水蒸気や過飽和度を取得できる赤外サウンダーAIRSを組み合わせたデータベースの作成に着手した。まずCloudSatとCALIPSOから雲域とそうでないものを識別する独自の雲マスクを開発した。NASA Langley研究所で開発されたCALIPSO用の標準雲マスクでは、ダスト粒子が水雲と隣接して存在するシーンや、光学的に厚い雲の下層で完全に信号が減衰しているシーンでも、ノイズを雲と誤判定するなどの問題が判明し、また我々の開発した雲マスクはこのようなシーンでもうまく働くことなどがわかった。さらに、これらのレーダーとライダーのデータを組み合わせる事で上層雲の粒子の微物理特性を求めるアルゴリズムを開発した。これはこれまで地上や船舶搭載用のレーダーやライダーに対して適用していたものを衛星システム解析用に今回新たに改良したものである。航空機による氷水量の現場観測データとの比較を開始しており、初期比較検証結果は、良い一致を示していた。また衛星と同期させた観測船「みらい」に搭載したレーダーやライダー観測を実施し、解析を行った。この結果、船舶搭載システムは下層雲を観測するのに衛星よりも適しているが、上層雲の解析には衛星データの方が解析可能な場合の多いことなどもわかってきた。
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