研究課題
深層海洋大循環の維持に必要な鉛直乱流拡散の値は大洋平均で10^<-4>m^2s^<-1>とされている。しかしながら、筆者の研究グループが深海用乱流計TurboMap-D(アレック電子社製)を用いて行ってきた深度1600mまでの乱流観測によれば、限られた海域で強い鉛直乱流拡散(乱流ホットスポット)が存在するものの、それらを合計しても大洋平均で10^<-4>m^2s^<-1>の値には及ばない。本研究では、これを補償するものとして、乱流観測の空白域である深海底から鉛直上方に広がる境界混合域に注目し、超深海用乱流計VMP-5500(ロックランド社製)を導入してその定量化を試みた。本年度は、特に、北太平洋における最強の乱流ホットスポットである伊豆-小笠原海域の6地点でVMP-5500を海底直上まで降下させ「深度約5000mの超深海に存在する乱流ホットスポット」の観測に我が国で初めて成功した。観測は2008年11月の北海道大学水産学部の「おしょろ丸」による航海中に行った。VMP-5500により得られたマイクロスケールのシアープロファイルを10mごとの小区間に分け、それぞれの区間でスペクトルを計算した。各スペクトルをコルモゴロフ波数まで積分して乱流消散率とを求め、Kρ=0.2ε/N^2(N:浮力周波数)により鉛直拡散係数Kρに換算した。その結果、特に、伊豆-小笠原海台の斜面上では、深度5000mに及ぶ海底直上でも10^<-3>m^2s^<-1>に達する強い鉛直乱流拡散が存在していることが明らかになった。また、この強い鉛直乱流拡散の存在する場所が、当該海域で卓越する半日周期の内部潮汐によってストレインが周期的に強められる場所と一致していることから、超深海乱流の励起にもparametric subharmonic instabilityの機構が主要な役割を果たしていることが示唆された。
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