木星からの電波放射機構についてはまだ解明されておらず、電波源の空間的な情報を詳細に得ることが重要となる。この木星からのデカメートル波帯の自然電波放射機構を解明するための観測手段の一つとして、VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線干渉計)がある。本研究では、高知高専と独立行政法人情報通信研究機構(NICT)鹿島宇宙技術センターとの間で木星電波e-VLBIを昨年度スタートさせた。 今年度は、昨年度の観測テストのデータを元に、主にハードウェアの面での観測システムの見直しを行った。まず受信系に関してはアンプとフィルタから成る受信系の再構築を行った。次に、NICTで新しくUSB接続型のサンプラーユニットが開発されたことにあわせて、観測サーバ(OS:Linux)もスペックを向上させた新しいものに置き換えた。そして、人工電波の混入が非常に低いと考えられる山間部に位置している、高知県の吾川木星電波観測所(高知高専)に、専用のクロスのログペリオディックアンテナと改善を行った受信システムを新しく設置したことにより、鹿島宇宙技術センター、高知高専、吾川木星電波観測所の3箇所での木星電波VLBI観測が可能になった。 木星電波の観測は、2008年2月からこの3つの観測地点で行われた。その結果、世界標準時の5月29日19:50頃と7月7日17:10頃に木星電波のVLBI観測に成功した。そして、この時間帯の鹿島宇宙技術センターと高知高専での観測データに対して、相関処理を行い、それぞれの観測日でフリンジを得ることができた。これは、今回の観測システムで初めてのフリンジ検出となる。今回得られたデータでの相関処理では、遅延残差は10マイクロ秒程度であった。また、相関処理を行った時間帯全体にわたって、フリンジの山が二つに分かれている現象が見られた。
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