研究概要 |
平成20年度は,東アジア越境大気汚染の概要を把握するため,排出源地域と考えられる中国の北京,天津,青島,南京,上海周辺の湖沼・ダム湖,および日本の離島である鹿児島県奄美大島,石川県舳倉島の湖沼を選定し,各閉鎖水域から約1m前後の柱状コア試料を2〜3本採取した.採取した柱状コアについては,層相記載を行い,各種分析用試料を採取した. 平成19年度に採取した国内都市域・日本海側の湖沼試料と奄美大島の堆積物試料については,セシウム-137法や鉛-210法などの年代測定,重金属分析を行い,地域毎の重金属元素濃度の歴史トレンドを明らかにした.その結果,国内の工業・都市域と日本海側や離島では,鉛・亜鉛・銅・水銀などの重金属濃度の歴史トレンドが明瞭に異なること,日本海側や離島では中国など大陸からの越境汚染の影響を強く受けていることを明らかにした.また,これらの堆積物の微小球状粒子(SCPs・IASs)分析を行い,都市・工業地域と日本海側・離島では,SCPs・IASs濃度の歴史トレンドが異なることを示した.礼文島,余呉湖,奄美大島,与那国などの堆積物については,有機汚染物質(PAHsなど)濃度分析を行い,大気汚染の質的変化を解析した.このほか,堆積物の鉛同位体比測定,IASsのパーティクル分析を行い,燃料種や排出源識別の可能性を検討した.以上の結果,離島・日本海側では,国内の工業・都市域の重金属・微小球状粒子・PAHs濃度の歴史トレンドとは異なる汚染プロファイルが見出された.それらは中国大陸など東アジア地域の経済発展と強く相関しており,1960年代以降のそれら地域からの越境汚染の可能性が強く示唆された.
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