研究概要 |
平成21年度は,東アジア越境大気汚染の長期時空間変動を解析するため,平成20年度に採取した中国の北京,天津,青島,南京,上海周辺の湖沼・ダム湖,日本の舳倉島などの離島の湖沼などの柱状コア,および平成19年度に採取した柱状コアについて,年代測定,微小球状粒子・有機汚染物質(PAHsなど)・重金属元素などの分析を実施した.また,各種分析結果の整理・検討・まとめを行った. 中国湖沼・ダム試料および国内都市域,郊外地域,離島の表層試料中の微小球状粒子(SCPs・IASsおよびMASs)分析を行い,中国と日本周辺の微小球状粒子の空間分布を明らかにした.また,SCPsとIASsについては,中国北京と国内都市域の含有量の歴史的変化解析から,中国と国内では明瞭に歴史トレンドが異なること,さらにSCPsのパーティクル分析(表面形態・化学組成)から,中国と国内ではSCPs粒子の化学組成が明瞭に異なることを明らかにした.重金属・有機汚染物質(PAHsなど)濃度については,中国と日本都市域・郊外地域・・離島の分析を行い,地域毎の重金属元素濃度やPAHs濃度の歴史トレンドを明らかにした.その結果,国内の工業・都市域と日本海側・離島や中国では,鉛・亜鉛・銅・水銀などの重金属濃度やPAHs濃度の歴史トレンドが異なること,日本海側や離島では中国など大陸からの越境汚染の影響を強く受けていることを示した.このほか,国内都市域・離島の鉛同位体比測定行い,鉛同位体比によって燃料種や排出源の識別が可能であることを明らかにした. 以上の時空間解析の結果,重金属・微小球状粒子・PAHs濃度の歴史トレンドは,離島・日本海側と国内都市域では明瞭に異なることが見出された.とくに離島の汚染プロファイルは,中国大陸など東アジア地域の経済発展と強く相関しており,1960年代以降の東アジア越境大気汚染の影響を強く受けていることを示した.
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