本研究では、北極海が果たす地球気候変動の役割に注目し、「北極海を介した北太平洋/北大西洋間の流通システムおよび古海洋環境変動の原因究明と復元」を目指している。平成21年度は最終年度であり、これまでの研究成果の集大成を行う事を目指した。すなわち、石灰質ナンノ化石から海洋水塊構造の崩壊様式の復元、および東西赤道太平洋の海流システムの変遷、浮遊性有孔虫化石からの古海洋環境への応用、および窒素同位体変動からの栄養塩供給システムの解明などについてまとめた。すなわち、石灰質ナンノ化石からは、海洋循環システムと関連して、気候変動が海洋表層の成層化に影響を与え、それが栄養塩量と密接に関係する事、そのような成層構造と関連する海洋環境を下部透光帯種と上部透光帯種およびコッコリスのサイズ変化などから詳細に復元する事に成功した。さらに、生物生産量変化のシステムからエルニーニョと関係する東西赤道太平洋の海流システムのバランスを解明し、大気循環と絡めた全地球規模の環境変動システムについてまで言及した。浮遊性有孔虫では、Neogloboquadrina pachydermaとN.incomptaの生態が古海洋変動解明に重要である事を示した。このような微化石の古生態と相まって、これらの生産量と密接に関連する栄養塩の供給システムを窒素同位体組成から循環モデルを提示する事に成功した。これらの成果は、代表者らが主催した平成21年度日本古生物学会シンポジウムで発表したほか、「化石」で特集号として論文を出版した。
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