研究概要 |
熱河層群相当層の調査・研究として,中国吉林省延吉市の近郊に分布する延吉層群を対象として,代表者,分担者全員で現地踏査を実施した. 中国の国内事情により試料の輸送が大幅に遅延し,2009年1月にやっと日本に到着した.直ちに,地球化学的分析,同位体層序学的分析,古生物学的分析,シーケンス層序学的分析に取りかかった.その結果,得られた安定炭素同位体比の値に変動が著しく大きいことが分かった.水素・炭素原子比から推測される熟成度に問題は無く,ビジュアルケロジェン分析が必要であることが分かった.試料の到着が遅延したので,未だビジュアルケロジェン分析には至っていない.目下のところの推測では,淡水性藻類が混在していること,湖沼性堆積物では普通の炭酸塩が相当量含まれており,その除去が不十分であった可能性がある.従って,分析のための試料の化学的処理をより入念に行なう計画を立て実施中である. 現地で実施した層相解析では,静穏な湖沼中心部の予測が得られた. 古生物学的研究については,淡水性の斧足類,腹足類,貝形虫類,カイエビ類などが得られた.これらの出現順序に一定の規則性があり,湖沼環境の変動が数回あったことがこれらの試料から得られた.今後,シーケンス層序学的な結果が得られたら,海水準変動による河川・湖沼の環境変動との関係がどうであるかが興味ある課題となる. 今回のサクセッションに於いては古土壌は特に検出されなかったので,この観点からの化学的堆積学的古環境解析は目下のところ出来ない.次年度に,より詳細な野外踏査を実施するか否か,前記の炭素同位体比分析の今後の結果を併せ考慮して決めたい. 北海道の蝦夷層群については,精度に問題がある層準について炭素同位体比分析を実施し,成果を論文として投稿した.以上より,論文として3編が年度内に印刷され,1編が受理され印刷待ちである.
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