研究課題
沈み込み帯に位置する日本列島では火山活動は必然であり,地殻内部におけるメルトの分布を定量的に明らかにすることは島弧におけるメルト生成機構を解明する上で非常に重要である。メルトが存在する部分溶融層は地震波低速度層として現れると予想されるため、本研究では、地殻内部のメルト存在域を地震波速度・ポアソン比・Vp/Vs比から区分することを目的の一つとする。そのためには、島弧地殻深部に相当する高温高圧条件で、中部地殻・下部地殻物質のポアソン比を精密に測定することが不可欠である。本年度は次の研究項目を推進した。(1)高温高圧下での弾性波速度測定実験。P波・S波速度同時測定システムを横浜国立大学設置のピストンシリンダー型高温高圧発生装置に組み込み、島弧下部地殻に相当する温度圧力条件でのP波・S波速度、ポアソン比測定を実施した。今年度は海洋性島弧下部地殻起源とされる丹沢山地に産する角閃石ハンレイ岩のP波・S波速度同時測定を行い、1.0GPa・800℃までの温度圧力条件において良質なP波・S波シグナルを得ることに成功した。このP波・S波速度同時測定システムを用いることにより、地殻構成岩石の部分融解条件におけるポアソン比測定が可能である。今後はより多様な地殻深部構成岩石のポアソン比測定を行う。(2)メルト分布様式とポアソン比。弾性波速度およびポアソン比へのメルトの影響を評価する場合、実験試料中のメルト分布の情報が重要である。よって、現在、画像解析装置により実験試料のメルト分布の解析に着手している。上記以外にも東北本州弧、伊豆小笠原弧、コヒスタン島弧の地殻構成岩石および部分融解域に関する研究に携わり、それら成果の一部は雑誌論文として公表されている(研究発表欄に示してある)。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Tectonophysics 467
ページ: 44-54
Journal of Geophysical Research 113
ページ: doi:10.1029/2008JB005587
Geological Society London, Special Publications 308
ページ: 183-194
http://kenkyu-web.jmk.ynu.ac.jp/Profiles/0013/0000302/profile.html