既存のダイヤモンド焼結体アンビルに比べ約8倍の体積を持つ大型diamond-SiC複合体アンビルを、我々が開発したHIP (Hot Isostatic Pressing)を利用する新しい合成方法を用いて作製し、その高温高圧実験での実用化を行う。そして、このアンビルの高いX線透過性、および市販のダイヤモンド焼結体アンビル並みの高い圧力発生能力を利用して、高温高圧下での放射光を用いたその場観察実験、特に高圧液体を対象としたラジオグラフィー実験技術の開発を行うことを目的に研究を行っている。平成21年度の研究業績を以下に述べる。 (1) 大容量HIPを用いたアンビルの生産 最適なHIP合成条件を検討し、神戸製鋼所の大容量HIP装置を用いて、アンビルの生産を行った。 (2) 放射光施設での圧発生実験 SPeing-8のBLO4B1に設置されたマルチアンビルプレスSPEED1500を用いて、高温高圧発生実験を行った。トランケーション3mmで40GPaの発生を達成した。我々のアンビルは1700K程度の高温高圧実験に繰り返し使用できることを示した。 (3) 放射光施設でのX線ラジオグラフィー実験 SPring-8のBLO4B1に設置されたマルチアンビルプレスSPEED1500を用いて、X線ラジオグラフィー実験を行った。さらに、単色X線を用いた、回折実験およびラジオグラフィー実験を行い、アンビルを通してデバイリングを観察できること・単色光でのラジオグラフィーが可能であることを示した。これらの結果は、開発したアンビルが、高圧下での差応力測定や変形実験さらに結晶成長過程の観察の研究に応用できることを示す。最後に、予備的実験として、中性子線に対する透過性をテストし、今後J-PARCでの高圧実験に十分使用可能であることが示された。
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