本年度は、まず、普通量(数+ナノグラム)のハフニウム同位体比精密測定法を確立し、その応用として、ハワイのマントルプルームの進化過程(論文1番目)や、アイスランドホットスポットの時間的変遷(論文5番目)を解明した。さらに、サブナノグラムのハフニウムの同位比精密測定法の開発の一部として、ハフニウムの分離法を検討した。ルテチウム176はベータ壊変してハフニウム176になるので、どちらも同位体希釈法で高精度に定量しなくてはならない。しかし、ルテチウムがフッ化水素酸中で不溶性のフッ化物を作るのに対して、ハフニウムは水溶性の錯体を作る。逆に、希硝酸中では、ルテチウムは溶解するが、ハフニウムは加水分解して沈殿しやすい。そのために、分解時入れるおのおののスパイクと同位体比平衡に達さない可能性がある。そこで、チタン溶液を加えて過塩素酸とともに乾固することにより、チタン化合物を沈殿させ、これとハフニウムを共沈させて、ルテチウムとハフニウムを分離する手法を開発した(論文2番目)。さらに、この方法で同時に鉛、ネオジム、ストロンチウムを一つの試料から分離する手法も確立した(論文4番目)。さらに、チタンとハフニウムは共にHFSEと呼ばれる、化学的に似た元素であり、チタン溶液からハフニウム、また、ネオジム、鉛を除去することが困難であった。そこで、チタン溶液からこれらの不純物元素を除去する方法を開発した(特許申請中)。これらの手法を駆使して、幌満かんらん岩体のマントルの鉛-ネオジムーハフニウム同位体比の測定に成功し、世界でこれまで見つかっていなかった低い鉛同位体比を持つマントル成分を発見し、幌満かんらん岩体は約10億年前に起源を持つことを再確認し、従来のモデルよりもマントルがより枯渇した成分に富むことをあきらかにした(論文3番目)。
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