本研究の目的は、サブナノグラムのハフニウムの同位体比の測定法とブランクの低い分析法を完成し、世界で最も新鮮な試科を得ることができる岩体のひとつである、北海道・幌満かんらん岩体を、年代学的・同位体地球化学的に解析することであった。以下、簡単に成果をまとめる。 1、これまで発見されていなかった低い鉛同位体比をもつ成分を発見した。 2、岩石記載、主成分元素、微量元素、Hf-Nd-Pb-Sr同位体システマティクスを用いて地球化学的に幌満かんらん岩体を解析した.そこで、幌満かんらん岩帯の成因と進化に関して4つの時間を入れることに成功した。すなわち、1Gaでの中央海嶺玄武岩のメルトの抽出によるマントルの枯渇、この枯渇したマントルへの50Ma以降のメルトとの反応(このメルトもまた中央海嶺玄武岩である)、このマントルの沈み込みによる沈み込み帯での堆積物起源の流体との反応(メタソマティズム)と島弧玄武岩の生成、さらに、地表への上昇とその際の流体の貫入である。 3、さらに研究を発展させ、ハロゲン(フッ素、塩素)の分析法も完成した.また、ゲルマニウム、ひ素、セレン、テルル等、とさまざまな揮発性元素についても分析法を確立した。この方法により、イオンプローブ(SIMS)の標準試料も作成した。これを用いて、幌満試料のハロゲン濃度を測定した。現在、ハロゲン元素のホスト鉱物を探している。また、ハロゲンの起源も探しているところである。このように研究はさらなる展開をしている。 4、もちろん、当初の目的であるサブナノグラムのハフニウム同位体比測定法の開発にも成功した。
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