本研究の目的は、種々のゼオライト化合物における水分子と交換性陽イオンの結晶学的配置を明らかにし、ゼオライトの蓄熱特性を支配している要因を結晶化学的見地から解明することによって、ヒートポンプ蓄熱材としての結晶化学的な材料設計指針を構築することを目的とする。 細孔内に分布する各水サイトからの脱水挙動をさらに詳細に検討するために、本年度は、高温下(T〓423K)における含水試料の単結晶X線構造解析を行い、各水サイトからの脱水プロセスのその場観察を行った。平成19年度において脱水処理を施した含水量の異なる7試料のchabazite(菱沸石)の単結晶X線構造解析を室温にて行ったが、その結果と今回のその場観察の結果を総合的にまとめた結果、「脱水の初期段階において特定の水サイトから急激な水分子の脱離が起こり、これらの水分子は他の水サイトへ移動し、その後、すべての水サイトから脱水が起こる」という脱水プロセスを明らかにした。原子間距離から判断して、脱水の初期段階において急激な脱離が起こる水分子はフレームワーク酸素と弱く水素結合していると考えられ、このことがこれらの水分子の優先的な脱離を引き起こしていると考えられる。水分子の脱離に伴って起こる交換性陽イオンの移動プロセスも明らかになった。 さらに、単結晶X線構造解析より、heulandite(輝沸石)の水分子と交換性陽イオンの位置を決定した。これらの可能な結晶学的配置を考慮して、脱水の初期段階において重要な役割を果たす「交換性陽イオンに配位していない水分子」の存在を検討した。大量の「交換性陽イオンに配位していない水分子」がA-channel内に存在していることを明らかにした。 上記で行ったX線回折強度測定には現有の4軸型X線回折装置を用いたが、それに先駆けて行った試料の結晶性評価には平成19年度に購入したイメージングプレート読み取り装置を用いた。X線構造解析計算には平成20年度に購入したパソコンを用いた。
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