バクテリア細胞表面での重希土類元素の濃集の原因を、X線吸収微細構造法(EXAFS法)を用いて吸着された希土類元素の局所構造から明らかにする実験に基づき解明した。希土類元素のうち、La、Nd、Sm、Gd、Ho、Tm、Yb、Luなどをバクテリア(Bacillus subtilis)、バクテリアの分画物質(ペプチドグリカン、脂質二重膜)、バクテリア細胞壁の模擬物質(リン酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、Ln樹脂)などに吸着させ、希土類元素に対する結合サイトを特定した。その結果、[希土類元素]/[結合サイト]比が小さい場合には、中希土類元素で配位数が小さなリン酸サイト(リン酸セルロースに類似)が、重希土類元素では配位数の大きなリン酸サイト(Ln樹脂に類似)が結合サイトとして重要であることが分かった。また[希土類元素]/[結合サイト]比が大きくなった場合には、いずれの希土類元素に対しても、カルボキシル基(カルボキシメチルセルロースに類似)の割合が増加することが分かった。一方、これらの傾向は、希土類元素パターンの形状の変化からも明らかであった。模擬物質であるLn樹脂への希土類元素の分配パターンは、顕著な重希土上がりのパターンを示すが、リン酸セルロースとカルボキシメチルセルロースは、中希土に極大を持つパターンを示す。バクテリアへの希土類元素の分配パターンは、[希土類元素]/[結合サイト]比が小さい揚合に重希土上がりのパターンを示したが、大きい場合には中希土に極大を持つパターンを示した。これらの傾向は、結合サイトにっいてEXAFSから得られた情報とよく一致しており、バクテリア細胞表面の多座のリン酸サイトが、顕著な重希土の濃集を示す原因であることが分かった。
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