磁気音波の相対論的衝撃波では、1990年頃から磁波モードの大振幅先駆波(プリカーサー)が発達することが知られていたが、本研究ではそのプリカーサーによる高エネルギー加速について研究を進めた。プリカーサーは衝撃波面でのシンクロトロン不安定によって励起される電磁波であり、上流から衝撃波に流入する電子は、その電磁波の圧力(ポンデラモーティブカ)を受けて減速される。その結果励起される静電場に着目した加速過程について調べた。この加速は、レーザー実験において次世代の加速器としても着目されている航跡場加速の素過程を応用したものである。 しかし、本研究の対象とする宇宙ジェットやガンマ線バースト天体などにおける衝撃波の航跡場加速では、レーザー加速器とは異なり、電磁波と静電場との相互作用で乱流状態に移行する状態での加速が重要となり、この非コヒーレント場における航跡場加速については未解決であった。また相対論衝撃波での粒子加速を解明するには、(1)マッハ数の関数として大振幅プリカーサーのポインティングフラックスを評価し、(2)プリカーサー波の非線形パラメトリック不安定とその乱流への移行、(3)乱流場での粒子加速などの理解が必要となる。これらの非線形複雑系過程を評価するために、1次元および2次元の相対論的プラズマ粒子シミュレーションを用いた。1次元シミュレーション結果をもとに粒子加速効率や最高エネルギーの評価を行い、短時間で高エネルギー粒子を生成する高効率の加速過程であることを明らかにした。また2次元衝撃波のシミュレーションも行い、多次元性からくるコヒーレンス度の低下が加速効率を下げるが、それでも粒子加速は十分起き得ることを確かめた。
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