平成19年度の課題は、最大2.2Tの一様強磁場に垂直な断面において、様々な位置関係で二本の純電子プラズマの円柱を形成し、両者の相互作用によって、断面内の電子密度分布が時間的に変化する過程を詳細に観測して、この相互作用に伴う密度分布構造の細密化の過程を定量的に検証することにあった。構造の微細化が、当初に想定したラーモア半径よりも遙かに大きなスケールで留まるということは大きな発見であった。しかし、この段階において、二次元乱流の構造解析は、空間全体に渡るフーリエ分解を基礎としていたため、位置の情報は失われていた。一方、別の側面から乱流を観ると、これは渦運動であり、渦の特徴は、各位置の構造と結びつけなければ、記述できない。位置と波数の両方の情報を抽出できる手法として、Wavelet展開を見出し試行の結果、平成19年度の実験計画の中にその適用を含めて、平成20年度に繋ぐと稔りが大きいと判断し、その変更計画を申請して、承認を得た。 この新たな方針は稔り多い成果に繋がった。二次元の渦度分布に比例する電子密度分布をWaveletで展開すると、その展開係数は各空間スケールの渦強度を特徴づける。この強度係数の集積値を適切に分割すると、強い渦と揺らぎを作る弱い渦とに区分けする客観的な手法に至った。この解析法によって、揺らぎ成分を抽出すると、これは空間的に細かな構造に対応しており、そのエネルギー・スペクトルは、理想的なモデルに基づく乱流理論と定量的に良く一致するとの結果を得た。この成果は平成20年6月に米国で開催された非中性プラズマの国際ワークショップにて報告した。
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