研究概要 |
平成20年度の課題の第1は、当初課題と設定されていた、粒子集合体としての純電子プラズマの連続流体としての適用限界を実験的に追究することにあった。これに加えて、平成19年度からの繰越しの計画の成果を発展させて、実験で直接観測される画像データに、波数空間と実空間の両方において同時分解能力を有するWavelet展開法を適用することによって、乱流の概念と渦の概念とを対比・連結することを第2の課題と設定した。 第1の課題については、磁場強度を広範囲に変化させて(2次元完全流体の近似度に強く影響する)電子のラーモア半径のサイズを変えたり、初期電子密度の高さと分布を変えたり、軸方向の長さを変えて、波数空間におけるエネルギーとエンストロフィーのスペクトルの形状や輸送率を、それぞれの関数として定量的に検証した。それぞれを独立変数として、散逸率やスペクトルを特徴づけるパラメータを記述することができた。ただし、それらの変数を全て取入れて、経験則として定量的・統一的に表現するには至っていない。実験の示すところでは、多くの場合に、ラーモア半径と散逸スケールとは比例関係に無いようである。実験データは十分蓄積されたので、解析面において更なる検討を要する。 第2の課題については、観測された渦画像を自己維持性の強い渦と揺らぎの強い弱い渦に区分し、後者が乱流の特性を理想的に満足することを初めて指摘した。この成果を纏めた論文はPhysical Review E, Vol. 78 (2008)に掲載された。本研究計画に沿ってこの成果に至る論文4編の筆頭著者となった院生(D2河井洋輔)は、2009年日本物理学会若手奨励賞を受賞した。 更に,分担者2名との共同活動の具体的成果として,9月1-2日にプラズマ物理学・宇宙論・Bose-Einstein凝縮体研究者を集めて分野横断的に議論する研究会を開き,今後の発展的交流の基礎作りを行った.
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