研究概要 |
本研究の課題は,非平衡初期分布から長距離クーロンカを介して発生・成長する不安定な揺動に伴う電子集団の構造変化を,詳細な観測を基にして定量的かつ系統的に把握することにある.19-20年度は乱流の構造解析を主要課題として,波数空間におけるエネルギー・コヒーレンス等の輸送を実空間の位置と対応させて定量分析することにより,渦構造の緩和過程の物理的内容を視覚的に表示し,従来の理論モデルの位置づけと今後展開すべき方向を示した.まとめとなる平成21年度の成果は次のとおりである.(1)これら「二次元渦のダイナミクス」をテーマとした観測と解析の結果を統合して,様々な緩和過程への分岐と,局所的な集団的揺らぎの中で新たな秩序構造が要素数を減らしつつ再生する過程を国際会議(ITC19際本)にて基調講演として報告した.(2)更に,3次元の熱平衡分布を形成すると極めて長時間の閉じこめ特性を示す非中性プラズマを特徴付ける集団振動(Dubin mode)が,極めて単純化された理論モデルとの対応を援用して,非接触的診断法として利用されて来たことに対して,実験・シミユレーシヨンを組み合わせて,批判的検証を行った.ポイントは導体壁の存在によって平衡分布がPenningモデルからわずかに変形することが,従来有限温度効果による固有振動からのずれと解釈されていた効果よりも,1桁以上大きい寄与をすることを明示したところにある.(ITC19河井報告)(3)高真空度(<10^-6Pa)の中にあっても,Penning平衡状で数十秒閉じこめられた電子プラズマの一部は他の負電荷粒子に変換されることが,本研究の中で発見され,その実験的同定を試みた.固有振動のスペクトル解析とTime-Of-Flight測定を適用した結果,当初予測していた「容器壁から熱放出される水素あるいは水分子による電子捕獲」とは異なり,高分子量(>100)の粒子であることが判明した.展開しつつある非中性プラズマの応用研究において,今後留意すベき重要過程である.
|