研究課題
基盤研究(B)
(1)【研究の背景】磁場閉じ込め核融合研究では、燃焼プラズマの実現とその制御へ向けて、熱、粒子、そして高速粒子の輸送を理解することの重要性がますます高まってきている。これらが効率的な磁場核融合炉の設計に決定的な役割を果たす重要な要因となるからである。しかし、これらは未だもって十分に解明されたとは言えず、解明を目指した実験及び理論研究は世界的にも最も重要な課題の一つとなっている。(2)【研究の目的】核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(Large Helical Device : LHD)において、トレーサー内蔵ペレット入射を利用した粒子輸送、高速粒子及び元素スペクトルなどの同時計測によって、プラズマの振る舞いや関連する物理量を従来と比べて格段に高い精度で計測する手法を確立することが本研究の目的である。(3)【研究の内容】本研究において重要な要素であるトレーサー内蔵ペレットは、以下の特色を有する。i)プラズマ中のほぼ任意の位置に不純物トレーサーを局所的に注入することができる。ii)不純物トレーサー中の総原子数をトレーサー内蔵ペレット製作時に決めることができる。iii)不純物トレーサーとなる粒子種の選定はほぼ任意である。その常温型の外殻は、ポリスチレン(-CH(C_6H_5)CH_2-)であり、トレーサー内蔵固体ペレット(Tracer-Encapsulated Solid PELlet : TESPEL)と呼んでいる。高温プラズマ中に入射されたTESPELは、まずその外殻が昇華し、溶発する。溶発した粒子により、ペレットの周囲に低温・高密度の中性粒子からなる溶発雲が形成される。この時、プラズマ中の高エネルギーイオンが溶発雲中の中性粒子と荷電交換し、高速粒子としてプラズマ外に出てくる。この高速粒子を中性粒子分析器(Neutral Particle Analyzer : NPA)により測定することで、プラズマ中の高エネルギー粒子のエネルギースペクトルの空間分布を得ることができる。この計測手法を、ペレット荷電交換(Pellet Charge eXchange : PCX)計測という。ここで、TESPEL外殻中を起源とする溶発雲中の水素イオンの線スペクトルを測定することで、そのシュタルク拡がりから溶発雲中の電子密度が得られる。これを用いて、高エネルギー粒子の絶対量についての情報を得ることができる。TESPELの外殻が溶発し終わると、次に不純物トレーサーが昇華、溶発する。さらに電離した不純物トレーサーイオンからの線スペクトルを高空間分解能の分光システムで測定することで、不純物トレーサーの振舞いを観測できる。このように、トレーサー内蔵ペレットを用いることで、様々な物理量をほぼ同時に観測することができる。本研究では、不純物及び高速粒子などをトレーサー内蔵ペレット入射を用いた同時計測により高い精度で測定する手法を確立することを目指す。
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