研究課題
プラズマと流体におけるマルチフィジックス現象に適応可能な新たなシミュレーション手法の開発とその応用に関して3つの課題を設定し、それぞれ研究を遂行した。第1の課題は多階層現象をモデル化するために必要な基礎アルゴリズムの開発である。本年度は、これまで独自に開発してきた電磁流体力学スキームHLLD及び流体モデルと粒子モデルの連結アルゴリズムを高度化し、その応用性を高めた。特に、HLLD法を改良し、磁場強度が空間的に急激に変化する地球磁気圏シミュレーションへも応用可能なモデルを構築した。さらに、多成分流体への発展も考慮することで、より複雑なマルチフィジックス現象への応用が可能となった。第2の課題は、典型的な多階層プラズマ現象である磁気リコネクションのマルチフィジックスシミュレーションである。本年度は、これまでに無いい解像度を持ったMHDシミュレーションを実施することにより高磁気レイノルズ数領域で現れる間欠的なリコネクションのダイナミクスを詳細に解析すると共に、リコネクションの間歇性に起因する粒子加速について流体モデルと粒子(運動論)モデルの連携を通して研究した。その結果、磁気島の間欠的な生成によって磁気島近傍の電流シートの集中が進み、リコネクションが加速すると共に、磁気島の放出に伴って下流域で激しい粒子加速が発生することを明らかにした。また、こうした現象と太陽フレアにおける硬X線放出との関係に関しても議論を行った.第3の課題は、大気中の雲の生成消滅過程を独自に開発した超水滴法によって精密にモデル化することにある。本年度は飛行機を使った実際の雲観測データと超水滴雲モデルの比較を実施し、計算に用いる超水滴の数を増やすと共に計算の結果得られる雲の粒径分布が観測値に近づくことを確認した。この結果は現実の雲のモデルとしての超水滴法の再現性を検証するものである。
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