研究課題
液体表面における溶質イオンの溶媒和構造は、自然界で起こる液体表面での特徴的な反応を理解する上で重要である。しかし、液体表面に関する研究は、非常に困難であり、未だに詳しいことはわかっていない。我々は、真空中を流れる連続液体流である液体ビーム法とレーザー光イオン化を組み合わせることで、NaI水溶液表面の溶質イオンの溶媒和構造について解析した。液体ビームに対して真空中でレーザーを照射し、NaI水溶液中のI-のCTTS(Charge Transfer To Solvent)バンドを多光子励起すると、水溶液表面1nm以内に存在するI-から電子が放出される。放出された電子の信号強度の照射レーザー波長依存性は水溶液表面の吸収スペクトルに相当する。このスペクトルを複数の濃度の場合について測定し、表面領域1nmにおける溶質イオンの溶媒和構造について解析した。その結果、すべての濃度の場合について225nm付近にピークをもつことがわかった。これはNaI水溶液のバルクのCTTSバンドと同じ範囲であることから、表面領域1nm以内のバルクよりに存在するI-から放出された電子であると考えられる。また、濃度の高い領域では、225nmより長波長側に吸収が表れた。表面域にI-が存在する場合、そのI-由来のCTTSバンドは赤方遷移するというJungwirthらの理論計算の結果を考慮すると、表面域にI-が存在することを示唆している。つまり、濃度が濃くなるに伴って表面域にイオンが存在し始めるといえる。また、NaI水溶液に対して、NaBrやNaClを添加しても、兆波長側の吸収が強くなった。これらの結果は、、NaBrやNaClが、NaIを表面に押し出す効果があることを示唆している。
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