研究課題
色素増感型太陽電池における電子移動機構の分子論的描像を第一原理計算により明らかにすることを目的とし、アナターゼ型TiO2(101)表面へのピリジンの吸着構造を密度汎関数法(DFT)によって検討した。アンカーの電子移動に与える影響を調べるために、リン酸基とカルボキシル基を用い、また溶媒効果を調べるために、真空中での吸着構造と溶媒水分子が存在する場合の構造変化を調べた。様々な大きさのTiO2薄膜モデルの清浄表面を、DFTによって最適化し、得られた表面にアンカーを吸着させてDFT計算を行った。さらにピリジンをアンカーに結合させて最適化を行い、真空中での吸着構造を得た。清浄表面の構造最適化から、計算精度を高めるには(101)面が小さく、縦に長いTiO2を使うのが良いという傾向が得られた。またアンカーおよびピリジンを吸着させた構造の最適化から、アンカーのみを吸着させる場合はTiO2の大きさごとに結合距離が0.1Åオーダーで変化するが、ピリジンを結合させると変化が一桁ほど小さくなるという結果が得られた。これは、吸着物質の空間的サイズにより、最適化の際にエネルギー極小値近傍に捕捉されることによる考えられる。さらに薄膜モデルでピリジンの吸着構造を収束させるために必要なTiO2の大きさは、2×1構造では2種類のアンカーともに48原子程度であることが分かった。続いて溶媒水密度から計算される個数の水分子を加え、古典分子動力学計算(MD)を行った。生成したMDトラジェクトリーからサンプルした構造を初期構造として、さらにDFT計算により最適化を行った。得られた結果の動径分布関数、ボルツマン分布解析から溶媒水がある場合でのピリジンの吸着構造を定量的に検討し、TiO2(101)表面との接合への溶媒の影響を議論した。
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