2年度は、超短パルスレーザーの磁気光学効果によるラーモア歳差運動観測を行う光学システムを完成させ、その試運転をモデル分子に対して行うことを目的とした。本研究で開発中の光学システムでは、初年度に導入した1台のピコ秒YAGレーザーを用い、(1)励起パルスでセル中にラジカルなどを作って磁化を発生、および(2)生成した分子のファラデー回転プローブ、を行う。本装置では、サンプルのセルを電磁石が作る磁場中に置く。その磁場強度については、(1)ファラデー回転周波数がレーザーの時間分解能で検出可能な領域にする、(2)光反応の際に発生するスピン分極をなるべく大きくする、の2点が条件である。この条件について理論計算した結果、1000Gから3000Gが適当と結論した。本年度は、この理論計算に基づいた電磁石の導入を行った。その後、設置された電磁石の形状をもとにレーザー光路の設計を行い、現在光学系の調整を行っている。 測定システムの製作とは別に、試運転に用いるのに適した観測対象を模索する予備実験を行った。紫外線照射で効率よく分解しかつ大きなスピン分極を発生する分子が適しているため、時間分解ESR装置で光分解生成ラジカルのスピン分極強度測定を行った。いくつかの系を検討し、イミド系ラジカルを生成するオキシムエステル類が、これまでモデルとして想定していたりん系ラジカルと同じくらい強いスピン分極を生成することを見出した。
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