水の多様性の関して以下の5つの研究を行った。1〜4)は論文執筆中、5)は印刷中。 1)氷の融解の分子的機構を新しい理論的方法を開発し明らかにした。多数の融解のトラジェックトリーを計算し、それらにおける初期の欠陥の生成、また中間スケールの欠損、特に、Interstitialや空孔の、またL-D defectsの役割を詳しく解析し、融解の初期核の生成機構を明らかにした。特に、これらの欠損の生成に於て、水素結合の「絡み合い」のようなものが生じ、結晶構造に戻るのを妨げることによって、融解をさらに誘発していくことを示した。また融解が進み、臨界核を形成する過程についても、逐次反応経路を決定し、エネルギーバリアーがモードのソフト化によっていかに下がり、融解が加速していくか、またそこにおけるネットワーク形状の変化の様子などを明らかにした。 2)シリコンの各種の相の安定性、またそれらの間の相転移の分子機構を、新しい3次元ネットワーク解析方などを開発し、明らかにした。 3)イオンチャネルのモデルとして「陰に電化したカーボンナノチューブ」を取り上げ、その自由エネルギー、エネルギー、エントロピーを反応経路に沿って求め、短時間ではエネルギーが支配し、長時間ではエントロピーを含めた自由エネルギーの支配によって、効率の良いイオン輸送が行われていることを明らかにした。 4)光励起黄色蛋白質の光反応のサイクルに関して、特に光異性化後のプロトン移動にともないに起る水素結合の局所変化が、末端部の大きな変化を引き起すかを明らかにした。 5)光合成細菌Rhodobacter sphaeroides由来の反応中心で生じる光駆動プロトン取り込み機構に関して理論的解析を行い、電子異動後、いかに2つのプロトンがキノンに移動するかを明らかにした。
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