研究課題/領域番号 |
19350015
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
城丸 春夫 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70196632)
|
研究分担者 |
兒玉 健 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20285092)
奥野 和彦 首都大学東京, 理工学研究科, 客員教授 (70087005)
|
キーワード | 静電型イオン蓄積リング / 輻射冷却 / フタロシアニン / フラーレン / 金クラスター / LDI / ESI / レーザー分光 |
研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き、多種のイオンの蓄積実験を行うとともに、イオン源開発を進めた。主な成果は以下のとおりである。 静電リングに蓄積した巨大分子イオンのレーザー誘起遅延反応実験により、分子の内部エネルギーの絶対値を求める手法を開発した。「詳細なつり合いの原理」を適用して、この反応の速度定数から光吸収後の内部エネルギー分布を求め、実験から得られた多光子吸収エネルギーを再現する内部温度を得た。イオン蓄積時の輻射冷却速度についても妥当な値が得られている。以上の結果は内外の学会で報告するとともに、論文として投稿準備中である。またフラーレンの輻射冷却速度の絶対値測定結果をまとめ、論文として発表した。その内容はNature Nanotechnologyでも紹介されている。 また、直鎖炭素クラスター(炭素分子)について種々の実験を行った。炭素分子負イオンをリングに蓄積して、レーザー合流実験により輻射冷却の観察を行った。結果については解析中である。末端に水素原子が一つついた炭素分子負イオンについては、前年度見出していた寿命が数ミリ秒に及ぶ準安定励起状態について、低温における寿命測定を行った。その寿命は環境温度に依存せず、準安定イオンの減衰が自動電子脱離によるものであることが分かった。また、両端に水素原子がついた炭素分子(ポリイン)の生成実験を行った。 一方イオン源に関しては、長年の課題であったエレクトロスプレー型イオン源の立ち上げが大きく進展し、種々のイオンが孤立または水和した状態で得られるようになった。また、金クラスターの輻射冷却を観察することを目指して、イオン源の開発を始めた。現時点では長時間安定性に問題があるものの、金微粒子のLDIにより15量体までの高温金クラスター負イオンの発生が確認されている。
|