研究概要 |
14族元素-14族元素π単結合は二重結合のようにσ結合の束縛を受けないので、結合長の制御が可能になると考えられる。このような結合長制御を目的として、1,2,2,3.4,4-ヘキサ-tert-ブチルビシクロ[1.1.0]テトラシラン(1)の2.4位をゲルマニウムに置き換えた、より長いケイ素-ケイ素π単結合をもつ化合物及び1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチルビシクロ[1.1.0]テトラゲルマシ(2)の2,4位をケイ素に置き換えた、より短いゲルマニウムーゲルマニウムπ単結合をもつ化合物を合成し、その構造や性質を調べた。 X線結晶構艶解析の結果、π単結合が短くなるとp軌道同士の重なりが大きくなり、π単結合がほぼ完全な平面構造をとることがわかった。一方、π単結合が長くなるとp軌道同士の重なりが小さくなり、平面構造と折れ曲がり構造が結晶中及び溶液中で共存するようになる。 また、紫外可視吸収スペクトルにおけるπ一π*吸収帯はπ単結合が短くなると短波長側にシフトし、π単結合が長くなると長波長側にシフトする。これは二っのp軌道が接近すると、π軌道とπ*軌道のエネルギー準位が本きく分裂するのに対して、p軌道の距離が大きい場合は、π軌道とπ*軌道のエネルギー準位の分裂が小さくなるためと考えられる。 以上め結果から、π単結合の結合長によって構造や性質は大きな影響を受けることがわかった。 また、化合物1と2の反応性についても検討した。化合物1と2はハロゲン化アルキルや末'端アルキンと反応して、π単結合にこれらの化合物が付加した生成物を与える。この反応はラジカル機構で進行することを明らかにした。
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